鳥の翼

鳥の「僕」が記す、ポエム。

『君には 生きたいと思う気持ちがありますか?』
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知らないみんな
あるところに

声を失った少女がいました。

少女は神様に問いました。

「なぜ私なのですか」と。

神様は答えます。

それがあなたの運命だからだと。

そして付け加えました。

「今の絶望が、未来の希望にきっと繋がる」と。

けれど彼女に

その声は届きませんでした。

彼女は壊れていきました。


受け入れることができない現実。

愛するものの声が聞こえない。

愛するものの声が

頭の中から消えていく。


忘れてしまうということの恐ろしさを

彼女は知りました。


何も聞こえない静かな世界。


けれどそれは

彼女の恐怖と不安を高めるものとなっていきました。


彼女の頭の中にはもう

誰の声もありません。

家族の声も

友の声も

恋人の声も

自分の声も。


ある日彼女は気づきます。


自分はみんなの声を忘れてしまった。


そのうちみんなも

自分の声を忘れて

自分の存在も

この世から去ったとき

生きていたことも忘れてしまうのではないかと。


見えない何かがとても怖く

見えないからこそ

静か過ぎる今の世界が嫌になる。


心の中で何度も私は

忘れてしまった声で呟く。

「忘れないで」と。


彼女は気づきました。

声を失ったときと同じように突然。


自分がみんなの声を忘れてしまっているのに

どうして自分はみんなに忘れないでと願えるのだろうか。


神様。


これが私の運命なのですか?



彼女は壊れました。


ゆっくりと時の流れの中で

けれど確実に。

修復不可能なくらいに。


壊れていく中彼女は

無意識に自らの人生を物語りにし、

絵本という形にして残しました。


彼女の周りに対する大きな愛は

いつしか大きな負の感情になって

黒に染まった彼女は

狂ったままに自ら命を絶ちました。


彼女の死を多くの者が悲しみ

嘆きました。


多くの者が彼女のためだけに涙を流しましたが

それを彼女が知ることはもうありませんでした。



数え切れないくらいの年月が立ち

彼女の周りの者達も年老いて死んでいきました。


彼女を知っているものはもういません。


けれど


彼女の想いがつまった絵本は

いつまでも

遠い未来の人達に読まれ続けることになりました。


神様は未来の人たちに言いました。


「絶望はいつか未来に繋がり、

 幸福はいつか過去に繋がり、

 思い出はきっと今に繋がるだろう」、と。




彼女は感情に押しつぶされてしまったけれど

彼女が周りの人たちの優しさを思い出すことは

なかったけれど



けれど彼女が描く絵本の最後には一言、


幸せだったと思う と書き記されていた。



感情に潰され、感情を忘れた彼女は


それでも幸せになろうと精一杯生きていた。


決して周りから見て

笑顔で話されるような人生でなかったとしても




彼女はきっと




幸せだった。





本人がその事に気づくことがなかったとしても。





それでも。
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